電車に揺られながら窓の外を眺める。背の高いビルがなくなり、田畑が見え始めると、彼女と初めて出会った街に来たんだと実感する。
何年かぶりに来たはずなのに、あの頃とあまり変わっていない景色に、懐かしい気持ちと彼女がもう居ない寂しさを感じる。
こんなに久しぶりになってしまったのは、彼女が亡くなってから1度は前を向いて進もうと決めたが、現実を受け入れるまでにとても時間がかかってしまったからで…。
やっぱり実際に彼女の眠っているお墓を前にすると足が竦むし、目を逸らしたくなる。色々と思い出が蘇り涙が止まらない中、お線香と彼女に似合いそうな花をいけて、ちゃんと生きているよ、なんて伝えてみた。
帰り際、ちょうと桜が舞ってることに気づき、彼女と出会った桜並木を通って駅まで行こうと思い、向かった。ここで彼女が声をかけてくれなかったら今の自分はいなかったし、とても感謝している。
昔を思い出しながら歩いていた時、突然向かいから強い風が吹いた。
『またね』
そう彼女の声が聞こえたように思え、急いで振り返る。
やっぱり誰もいない。
「ありがとう」