彼女が倒れ、手術になると知らされて数日、よく聞きなれた着信音、
連絡が来たことにすぐ気づけるようにと、唯一設定していた。
携帯の画面に映った彼女の名前と『メッセージが1件あります』という文字が目に移り、彼女の深刻な今を突きつけられた。
すぐにメッセージを開いたが、『会いたい』、その一言だけだった。
ただ、それだけでも今の僕には彼女に会いに行く理由としては十分だ。
『今から会いに行く』とだけ返信し、その後送られてきた病院へ急いで向かう。
数週間ぶりだし、どんな顔をして会えばいいか、なんの話をしようか、いろいろ考えながら向かった。
覚悟は決まったはずなのに…
彼女の病室に入った瞬間、頭が真っ白になった。
個室といえど、狭い病室に、想像以上の管と機械。
そして、最後に見た時よりも白くなった彼女がいた。
その直後、ドアが静かに開き、看護師が入ってきた。
「そろそろ、手術室に行く時間です。」
その言葉に彼女の家族は小さくうなずいた。
僕はその瞬間、「会えないかもしれない」というのが頭によぎり、心の奥底から湧き上がる不安に襲われた。
手術中の表示ランプが赤く光り続ける。
時計の秒針が一歩一歩進むたびに、胸が締め付けられるように鼓動しているのがわかる。
待合室の空気は重く、息をするのも苦しいほど。
隣に座る彼女の家族が、ハンカチを握りしめて涙をこらえている姿が目に入るが、僕は何も言えない。
それでも、僕はただ一つのことを何度も祈った。
「どうか無事に戻ってきてほしい。それだけでいい…」
その切なる願いが、心の底から溢れ出た。