せわしない雑踏の景色を眺めながら、今日も僕はあてもなく街を歩く。
昼と変わらないぐらい明るくて、賑やかで、心に空いた何かを埋めてくれる、そんな場所に僕はいる。
忘れたいと思っている僕がいる。
でも "忘れたくない"
彼女と過ごした時間を…
ここで過ごしていれば、彼女と出会う前に僕は戻れるかもしれない。
でも気づくとこの指がうずいてしまうのはなぜだろう。
僕が彼女に『君とずっと一緒にいたい』と伝えたあの日。
彼女は一緒にいることはできないと言った。
理由を答えてくれることはなく、悲しそうな顔でそう言った。
その後僕は逃げるように前に住んでいたビルがたくさん立ち並び、人が忙しなく動くような街に戻ってきた。
会いたいかと聞かれればそうなんだろうけど、彼女から逃げてきたびびりな僕には彼女に会う勇気がない。
それに向こうでは味わえなかった楽しさを手放すのも惜しい。
だから、もう少し…もう少しだけこのままで。