あの日から数日、何も手につかない毎日を過ごしていた。
目が覚めては携帯を開き、彼女からのメッセージがやっぱり来てないことを確認して、もう会えない事に泣いて、泣き疲れて眠る日々が続いていた。
ついには彼女がいなくなったことを実感するのも辛くなって、彼女の日記はご両親にお返しした。
彼女の言葉や笑顔、一緒に過ごした時間が頭をよぎるたびに、胸が締め付けられる。
それでも、彼女の最後の願いを叶えるために前に進む決意をしなければならないと感じていた。
だから、僕は彼女の好きだったあの場所に行った。そこは彼女とよく行った公園で、今は美しい桜が満開だった。
彼女と初めて会ったあの日と同じ…
歩く度に彼女と過ごした思い出が蘇る。喧嘩もしたけど、やっぱり彼女が嬉しそうに笑っていた姿を多く思い出し、知らない間に涙が流れていた。
突然向かい風が吹き、桜の花びらと共に僕の頬を撫でた。
『ここにいるよ。』
彼女の声が風に乗って聞こえたような、そんな気がした。
そっか、彼女はいつもそばにいてくれる。そう思った瞬間僕は、一歩を踏み出す覚悟を決めた。
彼女への思いと一緒に、前に進むことが彼女への最大の恩返しだと感じたから…。
その夜、家に帰り、彼女に向けて作った曲をもう一度聴いてみた。
その曲は彼女の色んな場面での笑顔を思い出す。そして、彼女が生きた証を忘れないで自分の道を歩むことが彼女の願いだったと、思い出させてくれた。
『私はずっと、ここにいるよ。』
彼女が生前僕が後ろ向きになった時、何度も伝えてくれた言葉が再び胸に響いた。
僕は静かに目を閉じ、深呼吸をした。彼女と過ごしたたくさんの思い出を胸に刻んで、彼女の声が導く未来へと、僕は進んでいく。